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EMMA_SON TRIPPING

2016/05/10

第12回 「100マイラー」の仲間たちと共に

こんにちは!EMMAです。今回はいきなりですが、ついに憧れの100マイラーになったぞー! というお話です。

4月上旬、ポカポカ陽気のなか、24時間かけて100マイル(=160km)を走破するグループラン『ツールド・トモ』(略称『T.D.T』)に参加してきました。100マイルといっても大会ではありません。2013年2月の当サイトのトップランナーのコーナーにも登場している井原知一さんが初めての100マイルレース参戦にあたり、「事前に100マイルを体感してみよう」と始めた練習会のようなもので、井原さんの仲間が徐々に集い、定期的に行われるようになりました。そうなんです、「トモ」とは井原さんのお名前です。

コースは東京大田区・羽田空港のそばの多摩川の河口近くから多摩川に添って北上。青梅市を抜けて高水山が折り返し地点(50マイル/80km)、そして同じコースを羽田まで戻り100マイルというロングディスタンスです。

大会でもなく公のイベントでもないので、街に迷惑をかけないよう、限られた人数で走ります。レースのような定期的なエイドもなけりゃ、もちろんコース誘導もなく。皆でおおよそ一定のペースを保って走り、24時間以内に帰ってくるというものです。1人で練習として160kmという距離を黙々と走れるか? そう簡単なことではありません。だからこそ、グループランという周りの力を借りて、初めての100マイルにチャレンジすることになりました。

朝から続々と集まる仲間たち。スタートは午前11時。ゴールは翌朝11時。一緒に走る顔ぶれは、大会では表彰台に乗るような俊足ランナー、私の何倍もトレイルランニング暦のある先輩ランナー、これまで何度も同じ大会で共に戦ってきた仲間。皆たくましい身体、筋肉美で、ぽよ~んとした私はなんだか浮いている気さえします(笑)。この日のために随分たくさん練習をしてダイエットもしたけれど、みんなのような美しいランナー体型にはまだまだほど遠い...。

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みんな駿足ランナーです

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一緒に走るメンバーとスタート前の集合写真

スタート! というほどの派手なものでもなく、ゆるやかに走り始めて、160kmという長い長い旅の出発です。仲間と談笑しながら、ペースはおおよそ6分半/km。2、3月は大好きな山を控えめにして、このグループランに向けて、ロードを6分~7分/kmで30km程度の距離を走る練習を重ねました。
「100マイルって一体身体はどうなっちゃうの?」
その未知の世界へチャレンジするために、とにかくひたすらたくさん走る。走ることに慣れるために、できる限り、とにかく毎日走る。30km走った翌日にあえて朝っぱらから25km走ってみたりもして、苦手なロード練習にずいぶん奮闘しました。

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日頃のロード練習のおかげか、なんとかみんなのペースについて行けました

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とにかく"脚にくる"こんな感じの道をただひたすらと

1km6分30秒ペースというとランナーの皆さんにとってはずいぶんゆっくりな気がすると思うのですが、20km、30kmと距離が積みあがっていくとなかなかこれが辛いのです。ペースを作ってくれる先輩100マイラーたちは(私からすれば)余裕綽々。わたしは最初の小さい壁が、早すぎる35kmくらいの地点で訪れました。キャッキャと女子トークを繰り広げていたのですが徐々に余裕がなくなり、話し相手になってくれていた仲間の背中が次第に遠くなり、なんとか離れないように追いかける...。ズシンと足が重い......。きっと日頃の練習が32kmくらいまでだったからでしょう。前後に仲間はいるものの、抜きつ抜かれつでなかなか前に進みません。やっとのことで40km手前の休憩ポイントに到着。まだたった38km。でもこのグループランは「弱音は吐かない」ルール。

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私以外にも初100マイルの人が何人かいて励まし合って走る

天気に恵まれたこの日。ここまででかなり汗をかき、喉がカラカラだった私はグビグビ水分補給。後先考えないこの性格、本当にロングレースに向いているんでしょうか(笑)。もともとお腹がゆるいわたし。案の定、この先延々と腹痛に悩まされることになりました。数キロ進んではトイレに駆け込み、また数キロ進んではトイレに籠る。トイレに籠っている間にグループランペースに置いて行かれるので、トイレから出たら前方遠くかすかに見える皆をなんとか追いかけます。メンバーがあまり離れすぎないようにと少し待機してくれるタイミングがあり、そのおかげで60km地点くらいまで延々続いた『トイレ・インターバル』をかろうじて乗り越えました。後から思い返せば、脚がだるいなどと考えていた30kmくらいから意識がお腹に移ったことで、不幸中の幸いか(?)、あっという間の60kmだったのが笑えます。

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いつの間にか夕暮れに

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お祭りに遭遇。迷惑にならないよう隅を歩いて通過

2時間くらいしてやっと下痢止めが効きはじめたころ(薬はあまり使いたくないけれど私のロングレースの必需品)、徐々に夕暮れに。160kmのうち約30kmだけはトレイルを走るルート設定となっており、トレイルに入る前に再びコンビニ補給。今回、あまり几帳面にあれこれ考えず、消化の悪いものは避けて食べたいものを食べてみようという作戦。なんだか身体がフレッシュなものを欲していたので、「生のピンクグレープフルーツ」のカップ(シロップごと)、「たまごスープ」に「シャケおにぎり」をイン、加えて「100%フルーツジュース」。

昨年の『funtrails100k』では、エイドで喜んでうどんを食べすぎてインスリンショックのような症状になったので、過度な補給にならない程度で留め、あとは登りながら摂ればいいやとこのくらいに。この一度にたくさん摂らない作戦がゆるゆるお腹の調子には良かったのか、これまでは必ず悩まされていた食後の腹痛も今回は問題なし。

ナイトトレイルは意外と得意で、夜にテンションが高くなり(いつも高いけれど更に高い)、ズンズン進めることが多い私。眠気にも比較的強いのはロング向き。その調子で喜んでトレイルを走っていたらうっかり仲間を見失ってロスト。恥ずかしいことにロストしたことになかなか気付けず、本来ならば尾根道を登るところをずいぶん下の沢まで駆け降りてしまったのです。冷静に考えれば山頂を目指していてそんなにも下っていくのはおかしいわけで、判断能力が鈍っていたのかもしれません。レースではないため、コースマーキングもなければ、誰かが助けにきてくれるわけでもありません。あくまで個人の練習、地図とコンパスを取り出し、GPSで現在地を探って元のルートを探索。普段から山で地図・コンパス・GPSの3点セットに慣れていたことが功を奏して、やや時間がかかったもののなんとかメインのトレイルに復帰。

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仲間に会えて一安心。折り返し80km地点

そこから巻き返しを図るべくモリモリと登り、折り返しの山頂を経て、下りは爆走。すでに80km近く走っていたけれど、ロードとトレイルでは使う筋肉が違うのか、不思議と脚は軽い。長かったロードからトレイルに入り「やっぱり山が好き!」と檻から放たれた野生動物のように無我夢中であっという間にトレイルを駆け降りました。街に出たところで皆に追いつきました。

さて、95kmくらいまできたのですが、ここからが長い。距離のことはできるだけ考えないようにしました。せっかくウン万円もする『SUUNTO Ambit』を付けていたけれど時計もあえて見ず。あと60kmもあるなんて考えたら気が遠くなりそうです。距離の感覚は持たずに、ただただ夜が明けて11時まで走り続けるのみ。ここからどんどんとペースが落ちてくることを鑑みて、2人くらいと共に皆よりも少し先に休憩場所を出発。

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荷物の整理と補給タイム。結構冷静でした

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走るのが遅い私は「休憩少なめ」はレースでも鉄則

夜の河川敷は真っ暗で景色の変化がなく、グループランといっても後半は、やや仲間との間隔が開いていきます。10kmほど進んだところで、後ろからどんどん皆が追い付いてきます。前半と同じく6分半/km~7分を刻む彼らはあっという間に私を追い抜き、一緒に走ろうと思っても全くついて行けない。そこでやっと手元の時計を見ると、ペースは8分半/km。
「あれっ、これじゃほとんど早歩きだ」。
少しペースを上げて、これで6分半くらいだろうと思って時計を見てもペースは8分/km。
「おかしいなぁ、こんなに頑張って走って体感では6分くらいなのに、よくて7分半くらいしかスピードが出ない」。
普段のジョギングなら、適当に走っていたらうっかり5分半/kmくらいのスピードが出てしまうくらいで、むしろ7分ペースで走るなど相当ゆっくりで難しいはず。それがどうにもこうにも、歩きに毛が生えたくらいのスピードしか出ない。応援に来てくれた友人が自転車で並走してくれたけれど、それでも脚が進まない。これが100マイルかぁ。

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真っ暗ななか距離の感覚が狂う

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アスファルトに慣れていない私。ロード練習しておいて本当によかった


「それでもいい、歩かない。走り続けることが大事なんだ」。
そう思ってただ黙々と夜が明けるのを待ちながら走り続けました。トップランナーでない私たちにとって、ロングレースは誰かとの戦いではなく自分との戦いです。ウルトラやトレイルランニングをしない知人からは「そんなに長時間、一体何を考えて走っているのか」と聞かれることが多いけれど、意外と何も考えていないのかもしれません。特に夜間は私にとって『集中』が大切で、キュッと引き締まった精神状態で、集中して黙々と走る。それは瞑想とかそういうものにすら似ている気がします。心を鎮めて無に近い状態で、静かに自分と向き合う時間。脚はただただリズムを刻んでいるだけ。その感覚になった時、ふっと辛さから解放される気がして、すごく気持ちがいいのです。ただし、脚が痛いとか胃が気持ち悪いとか不調を抱えているとそうもいかないわけで、今回のコンディションの良さに救われました。

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徐々に夜が明けていく

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前についていけず、でも後ろに追いつかれるでもなく、黙々と

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何も考えていなかったかも

夜が明けると、朝早くから応援に駆け付けてくれた友人たちが河川敷に次々と現れます。太陽の光にパワーをもらい、友人たちの応援にパワーをもらい、足取りも軽く......はならないもののいつの間にか5km、10kmと進み残り10数kmまで来ました。長い暗闇の時を抜けた頃にはいつの間にか人生最長距離の150km。

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歩いてますね(笑)

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応援に来てくれた友人の前は心なしかペース上げて走る

と、ここで応援を兼ねて並走しに来ていたチームメイトが、
「EMMAちゃんと一緒に走ることにする!ゴールまで一緒に行こう!」
とマンツーマンで引っ張ってくれることに。私の憧れの彼女は経験も豊富でロードにもトレイルにも強く、いつもみんなが辛い辛いと嘆くレースを「楽しいじゃ~ん」と言ってのける、憧れの存在。

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あれこれと色んな話で笑わせてくれる

100マイルの10分の1にも満たないたった10kmが100倍にも1000倍にも思える最後の10km。最も辛いその部分を、隣で海外レースの話をしてくれたり、「わかるよ~そうだよね~」と共感してくれたり、顔を歪めて唸るわたしを笑い飛ばしてくれたり。そんな優しさに応えようと一生懸命走りました。きっと信越五岳トレイルランニングレースでペーサーの存在を経験したことのある人ならわかるでしょう。
「もう歩いても走っても同じだよ。絶対ゴールできるけど、だったら最後まで走ろうよ!走ったほうがゴールが近いよ!」
ロングレースの私の弱点は、最後の10km~20kmでもうゴールできると判って集中力が切れて具合が悪くなったり歩いてしまったりすること。最近それを克服しつつあるものの、初めての100マイルで「最後まで走りつづける」を叶えてくれた仲間に感謝です。

トレイルパートで「もう山を下りたらやめるかもしれない」と言っていた仲間が怒涛のように追い上げてきたりもして、最後はボロボロの私を励ましてくれて、あと5km、あと3km、あと2km......。脚が上がらなくてちょっとしたでっぱりにつまずきそうになりながら、「ウ~ア~」と声にならない声を出しながら、最後の数100メートル。ゴールで待つ仲間が見えて初めて100マイルを実感して涙があふれました。引っ張ってくれたチームメイトと手を繋ぎ、ビニール紐のゴールテープをめがけて出せるすべての力を振り絞って飛び込みました。

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脚がちぎれそうだけどそんなのどうでもいい!とにかくうれしい!

仲間からの激励、握手、抱擁。100マイルも走ったらどうなっちゃうのかと思っていたけれど、意外にも自分の身体は自分の身体のままでした。


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一緒に走った仲間と

実は、いまもまだ100マイル走ったのだということがあまり実感なく。100マイラーだ! と胸を張るにはまだまだという気がしています。それは、同じ時間と距離を共にした仲間の強さを目にして、自分の余裕のなさを痛感したからかもしれません。がむしゃらに、とにかく黙々と走り続けて達成したけれど、もっと周りに気を配るくらいの余裕がほしいものです。

初めての100マイルを振り返って今回感じたことは、
・100mileにチャレンジしようと思えば道はどこにでもあるということ
・だけどひとりでは成し遂げられなかったこと
・練習=走った距離・時間は嘘をつかないということ
・走り続ければゴールは必ずあるということ
・自分にはまだ早い遅いとかはなく、やるかやらないか、練習すれば良いということ
そんなところでしょうか。

100マイルを走るために、練習方法を180度変え、苦手な練習を積み重ねた今回。「実力に見合った〇〇」なんていう考えもあるけれど、経験に見合った、ならまだしも実力は練習次第。それが、未知の世界だと思っていた100マイルを意外にもあっという間に終えて感じたなによりもの学びかもしれません。

国内ではまだ100マイルレースが少なく、仕事をしていると金銭面や休暇の問題でそんなに気軽に海外に行けない人も多い。だからこそ少ないレースに人気が集中して、なかなか出走できない=なかなか100マイラーになれない問題もありますが、レースでなきゃならないわけではなく。レースという恵まれた空間に頼らない精神力さえあれば、いつだって走り出せば100マイルを紡ぎだすことはできる。だけどやはり100マイルを完走する人達は日頃から見えない努力を積み重ねていて、付け焼刃でなく長い目でみて自分と向き合会えるおおらかさがありました。私も、これが終着点ではなくスタートなんだと思って、"いつでも100マイルを走れるランナー"を目指して自分に向き合っていこうと思います。

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