トップページ > EMMA_SON > 第14回 八ヶ岳 on my mind. 

EMMA_SON TRIPPING

2016/06/27

第14回 八ヶ岳 on my mind. 

こんにちは!EMMAです。
3月にやってしまった肉離れ。5月最終週に復帰してからもうすぐ1ヶ月が経とうとしています。初めての肉離れで、徐々にトレーニング量や種類を増やしていくなかで気付いたこと、それからやっと山にも行くことができるようになり久々の山で感じたことなどを書き記したいと思います。

まずは、リハビリで気付いたことを紹介します。
■これまでの状況
・左前腿(内側広筋)の肉離れ
・内出血と腫れを伴う重度のもの
・5週間のレストと鍼治療・湯治・日常のテーピング
・6週目からゆっくりロードラン、後半にハイキングを再開
・7週目に予防のテーピングをしつつトレイルランニングを再開

6週目に走り始め、再開初日は息も苦しく身体も重く、ほとんどスピードは出なかったのですが、2~3日に1回5kmくらいを走るうちにすぐに慣れるようになりました。山の復帰は奥秩父・瑞牆山の周回日帰りへ行ったのですが、意外にも山での動きはロードを走るよりも調子がよく、久々の登山の1日も無事終えました。もともと標高の高いところには順応しやすく、標高3000mでもさほど身体が苦しくならないもので、気持ちよく歩くことができました。

IMG_6394.JPG
走れないくらいの岩山が続くため復帰にはちょうど良い

IMG_6466.JPG
久々の高い山。やっぱりこの空の広さは心を洗っていれる

問題を感じはじめたのは、友人との朝ランでちょっと調子に乗ってスピードを出してみた時のこと。ゆっくり走っている時と、速く走る時では使う筋肉や股関節の動きも違うので、試しに動かしてみようと思ってスピードを出したら、とたんにヒザと腸脛(ちょうけい)靭帯が痛くなりました。怪我をした左脚の腸脛靭帯、そして右足のヒザ。

13524046_1119795588081223_36608878_o.jpg
友人と代々木公園のトレイル周回を走る朝ラン

内もも(内側広筋)の肉離れなので、外側の腸脛に負担がかかる。また、怪我をした左足が弱くなっているために右側に強く踏み込んでいる? のか、右膝が痛い。完全に筋肉のバランスが悪くなっていてハチャメチャです。さて、これをどうやって治していくべきか。

そこから約4週間。
腸脛とヒザ痛はマッサージをして少し休んだことで痛みは引きました。それ以来、走る時には無理をしすぎないように慎重に、山へ行く時にはテーピングでしっかりサポートするようになりました。また、衝撃が強くうっかり捻挫などの別の怪我を誘発しそうなトレイルランニングの練習は少々控え目にして、高い山でじっくり長時間行動をすることで、太い筋肉と体幹の強化を目指しています。モモの筋肉が弱いとヒザを支える力が弱いのか、どうも長時間になると下りでヒザが安定しない感覚があり、もどかしさは残るものの、随分と『山登りの強さ』の感覚を取り戻してきたようにも思います。

この4週間は色んな気持ちの変化がありました。
大好きな山や走ることを急に断ち、5週間も安静期間があったものでその解放感と喜びは言葉には表せないものがありました。山頂で青空のもと絶景を眺めていると涙が出そうになる。大袈裟なようですが、これまで幸いにもさほど大きな怪我をしてこなかったことと、4月の100マイルランではメンタルもフィジカルもこれまでで一番というくらい発揮。その直後にポキッと心を折られたショックが思っているよりも大きかったのかもしれません。積み上げてきたものが崩れ落ちたようで、「またイチからか・・・」と思っていたけれど、山の包容力というものは偉大で、たった5週間でどん底みたいに感じていた私のちっぽけさをすぐに気付かせてくれました。

第一回から毎年参加している『スリーピークス八ヶ岳トレイル』では、今年はボランティアで参加しました。初日はわずかですが歩荷のお手伝い、当日は前三ッ頭という稜線での分岐誘導でした。ボランティア用に用意していただいた宿に溢れるほどの人数が集っていました。

実は、前日にせっかく八ヶ岳に行くのだからと南部の山とコースの一部を縦走しました。観音平から入り、編笠山、権現岳、三ツ頭を経て、コースとなる天女山までの下りを行くコース。コースに合流する三ツ頭までは、岩場も多く山の経験が必要なエリアです。登りもそれなりにハードで、高地なので空気も薄い。走れるような場所ではないため、2日分の15kg近い荷物を背負ってじっくりじわじわ登りました。

IMG_7001.JPG
編笠山頂での雲海と朝焼け

IMG_7008.JPG
権現岳へ向かうハイマツの稜線。キレットや赤岳、阿弥陀岳、奥には横岳、
硫黄岳、蓼科山もなど八ヶ岳の山々が見える

IMG_7102.JPG
コースの一部。前三ツ頭から天の河原に向かう緑豊かなトレイル


レースの前日に周辺の山々を歩いてみて感じたことは、こんなにも美しく、本格的な登山をする高地のエリアで大会を開催できているということが素晴らしいということ。あえて「登山」と表現しますが、登山をする人のなかでもアルプスに次いで八ヶ岳は愛好家が多く、憧れのエリアでもあります。2,000~3,000m級の山々が連なり、晴れれば富士山も南北中央アルプスも望むことのできる場所です。貴重な高山植物や動物も多く住まい、丁寧な整備のもとにその美しさが守られています。

レースでは、必死のあまりに景色を味わう余裕はほとんどありません。私のような足が遅いランナーが必至すぎて見られないというだけでなく、速ければそれはそれで、気持ちよいものの一瞬で絶景を過ぎ去っていくものです。初めてスリーピークスに出た時には、周りの山々のこともほとんど知らず、天気が悪かったこともあり、足元の草花に目もくれず、脚が痛かったりもして(笑)、このコースの良さの10%くらいしか味わえていなかったかもしれないと今では思うほどです。

IMG_7298.JPG
写真右側に高山植物があり、下りの勢いで選手がそちらへ踏み込まないように注意を呼びかける

IMG_7382.JPG
登山客も多いエリア。たくさんコミュニケーションを取りました

IMG_7229.JPG
絶景ポイント。この稜線の坂を備品を取りに行ったりと何度か往復しました

八ヶ岳はどの山も過去に何度も訪れていますが、レース前日にトレーニングでもなく走るでもなく、改めて「登山」をして感じられたのはとても良い経験でした。当日の配置エリアを、いちハイカー目線で歩き、コースを頭に入れることができたこともボランティアとしては重要でした。

ボランティアのポイントは登山口から登山コースタイムで片道3時間10分の場所。もちろん水場もなく、トイレに行くには往復5~6時間なので、朝に済ませました。同じエリアのメンバーは強い人ばかりで、朝の配置までの短いリミットに迫られ2時間弱で荷物を背負って登りました。稜線は天候によっては風が強く、雨が降れば低体温になる場所。選手も自分達自身も危険なところです。意識の高いメンバーはガス、ツェルト、支給品以外の様々なエマージェンシーグッズ、飲みものや食料を持参していました。

IMG_7176.JPG
チーム壮太(小川壮太さんの練習会メンバー)の皆さんは、怪我人の出やすいエリアや登山客の多いエリアを巡回

レースに出ているとみなさん経験があると思うのですが、『こんなところに!?』という場所に応援や分岐誘導の人達が立っていてくれたりします。山中の分岐誘導のボランティアは初めてでしたが、本当にそのありがたみを痛感しました。また、運よく天気に恵まれ、さらには稜線の絶景という山好きには嬉しい場所への配置でしたが、山中に入れるとは限らないなかで、会場受付、ゴール地点、公道での車の誘導、深い森の中での少人数の配置など多くのボランティアメンバーが結束を固めてレースを支えました。ボランティアのための要綱資料は非常に細かく、様々なトラブルに対する対策法なども幾重にも考えられていて、レースがいかに恵まれた特殊な環境で山にいることなのか、ずっしりと私の心に響きました。

最近、2015年の「山岳遭難者」と「死者・行方不明者」が統計の残る1961年以降で過去最高になったとのニュースがありました。2015年に発生した山岳遭難は2508件で、遭難した人は3043人。うち死者・行方不明者は335人。遭難者が10年間で64.2%増。遭難した理由で最も多いのは「道に迷った」(35.9%)で、次いで「滑落」(16.5%)、「転倒」(15.3%)。

警視庁の資料によると「山岳遭難の多くは、天候に関する不適切な判断や、不十分な装備で体力的に無理な計画を立てるなど、知識・経験・体力の不足等が原因で発生している」と検証されていて、遭難を未然に防ぐため、登山に当たっては、登山計画の作成・提出、気象条件、体力、体調、登山の経験等に見合った山を選択し、登山コース、日程、十分な装備、食料等に配意して、余裕のある、安全な登山計画を立てること、危険箇所を事前によく調べて把握しておくこと、的確な状況判断、地図、コンパス等を有効に活用して常に自分の位置を確認して道迷いを防ぐなどの呼びかけがされています。

「登山」をするにあたっては、いずれも当たり前のことで、登山計画書の義務化などの議論においては、計画書作成が最も大事な経験だと主張する人もいて、それにはわたしも納得感があります。マナーモラルの話をしたいわけではないので、トレイルランナーに限った話ではないのですが、例えば、レースにおいてはどうか。

コースマップが用意されていて、(安全に基づいた)制限時間が設定されていて、経験体力を踏まえたエントリー資格の基準があり、エイドに食料や水分が用意されている。天候が悪くなれば大会本部が中止することもあり、迷いやすい場所には分岐誘導、危険個所には誘導スタッフが配置されています。指摘されているようなことが、レースではすべて大会本部が選手達のために準備して、守ってくれているとも言えます。なんて恵まれた環境で、贅沢な遊びなんだろうか。そういった視点でこのニュースを読み取ると、レースと同じ感覚でレース以外の時に、トレーニングといって無防備に山に入ることがどういうことであるのかとても良くわかるような気がします。


結局、スリーピークスのその翌週末もまた、八ヶ岳に足を運びました。山仲間とテント場で合流を約束して、私は一人でまたも観音平から入り、今度は梯子や鎖、それすらない岩場を越えて、赤岳、阿弥陀岳往復、横岳、硫黄岳と縦走してきました。シューズはトレイルランニング用、暑ければ半袖短パンにもなるので、すれ違う登山客に驚かれることもありますが、いずれもこれまでの登山経験に基づいて考えています。バックパックの中にはもちろん防寒もレインも入っていて、十数キロのトレイルランニングに比べれば重装備なので走れたもんではありません(笑)

IMG_7654.JPG
高所恐怖症だったら足が震えそうな長梯子

IMG_7685.JPG
赤岳に登った後重い荷物をひとまず置いて、アタックザックに切り替えて中岳経由阿弥陀岳を往復。こういう時にはトレイルランニングをやっていてよかったと思う

IMG_7680.JPG
右側が赤岳山頂

山へ行く時はレースへ行く時とは全く違う準備や装備です。登山計画書を出し、自身の判断で選んだ様々なものが入った荷物を背負って歩き、標高が高い空気の薄い足場の悪い場所や岩場で全身を使いながら歩いて、それがまた知識・経験面では山力となり、身体も足腰・体幹の強さに繋がります。歩荷推奨でもなく好きで背負っているだけですが、重いものを背負っているとトレイルランニングの装備になった瞬間に羽根が生えたような気分になります。

山の先輩に教わったり、本や雑誌やネットを読み漁ったり、自分自身が経験することで徐々に積み上げようとしている知識とスキルですが、一方でスキンレイヤーやミッドレイヤー、レインウエアのレベル、補給計画については、近年装備に関して厳しくなった全国のトレイルランニングレースから学んだこともたくさんあります。装備に関する啓蒙活動は山の知識を無料で教えていただいているようなもので、登山にも大いに役立っています。

私は標高が高い低いに限らず、山に登るのが大好きです。自然と戯れる感覚で、トレイルランニングはその中の遊びのひとつの方法。もちろんレースに出るのも好きですが、"トレーニングのため"に山に行くことはほとんどありません。

IMG_7872.JPG
標高を下げたテント場でハイカー、トレラン仲間と合流してキャンプ

IMG_7708.JPG
野天風呂(温泉)に入ってみたり

IMG_7746.JPG
翌日はみんなでハイキング

テント場で仲間達と山ごはんを食べてお酒を飲むのもまた山の楽しみで、温泉に入りたいからここに行こうとか、帰りはあちら側に降りたいからこの山を通って行こうとか、まさに山の醍醐味。とにかく趣味なのだから楽しさ優先で行く山や高低、スタイルを考えています。遊び方や楽しみ方が無数にあって、ちょっと視点を変えるだけで表情や感じ取るものもまったく違う。レースやトレーニングのためだけに行くのはもったいない。それに、「山力」はレースだけで養われるものじゃない気がするのです。

久しぶりに山に触れて、それと同時にレースを客観的に見て、山力のある山好きでいたい、改めてそんな風に思うのでした。怪我などちょっとしたハプニングでの気づきが意外と自分にとって得るものがあったりもするものですね。今後出るレースは、去年とはまた違った見え方をするかもしれない。

IMG_7875.JPG
私よりもずっと先輩、山力たっぷりな女子達と

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.trailrunning-ohkoku.jp/mt/mt-tb.cgi/237

コメントを書く

コメント記入欄

ページのトップへ戻る