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トップランナー | 『トレラン王国』が応援するリスペクトすべきヒーロー&ヒロインたち

第5回 星野 緑さん

第5回 星野 緑さん

マイペースとおちゃめ。日本のトップ女子トレイルランナーの星野さんと話していると、そんな言葉が頭に浮かんでくる。
冬はゲレンデで過ごし、夏は山で過ごすという斜面好きの元気な女性。トレイルランニングに関しては「特に目標はないですよ」と構えた様子もない。
好きな時に、好きなように走るのが彼女のスタイルなのです。

ほしの・みどり

1973年埼玉県浦和市出身。短大卒業後本格的にスキーを始め、「全日本スキー技術選手権大会」に出場。現在は群馬県川場スキー場で冬季はスキーインストラクターを務める。トレイルランニングとの出会いは2004年のハセツネCUP(日本山岳耐久レース)。過去6回出場しベストタイムは9時間57分(08年)。09年度第17回大会で優勝。08年のトランスジャパン・アルプスレースで準優勝、北丹沢山岳レースでも準優勝など、国内のメジャー大会で好成績を収める女子トップトレイルランナーのひとり。『アドベンチャーディバズ』『ザ・ノース・フェイス』のトレイルランニング講習会講師も務める人気インストラクター。

[愛用マテリアル]

●シューズ/Sportiva クロスライト
●バックパック/ザ・ノース・フェイス マーティンウィング
● ウェア/ザ・ノース・フェイス、Xソックス
* いずれも2010年1月時点

スキーのためのオフトレからトレランへ導かれる

6回目のハセツネ、華やかなゴール。2009年、10時間10分で見事優勝
6回目のハセツネ、華やかなゴール。2009年、10時間10分で見事優勝

埼玉県浦和で生まれ育った星野さんは、子供の頃は水泳、バレーボールなどに熱中し、学生時代は持久系のスポーツには全く縁がなかった。スキーも家族旅行で年に数回行く程度であったが、短大を卒業し東京都内の金融関係の会社に就職してから本格的にスタートし、気がつけばスキーにどっぷりはまっていた。

「就職してしばらくは休みのたびに友人とスキー場に通っていたが、『もっとスキーを上手くなりたい!』と思い、思い切って4年間勤めた会社を辞めました。それからは毎年12月から翌年4月くらいまで群馬県川場スキー場で寮に住み込んで働き、オフだけ東京に戻り派遣社員として働くという生活を十年以上続けました」

2009年秋、”ハセツネ”の女王に輝く
初めてのハセツネ、無邪気なスタート前。2004年、15時間12分で無事完走
初めてのハセツネ、無邪気なスタート前。2004年、15時間12分で無事完走

おかげでスキーの腕はめきめき上達し、国内のさまざまな大会に出場して頭角を現していった。スキー技術を競う『全日本スキー技術選手権大会』には埼玉県代表として出場する一方、スキー指導員を指導する「デモンストレーター」にもなった。

星野さんとトレイルランニングの出会いもこの川場時代のこと。スキーのオフシーズンはどうしても太るので、ダイエットのためにとジョギングを始め、最初は5~10kmのロードのマラソン大会に参加し、毎年何かの大会に目標を定めトレーニングを積んでいた。面白い大会はないかと探していて「日本山岳耐久レース」(ハセツネCUP)の存在を知り、最初に参加したのが2004年のこと。本人によれば、「コテンパンにやられてしまった」とのこと。

「大したトレーニングもせずに出場して、初めてのハセツネのタイムは15時間くらいでした。『こんなに辛いことはない』『もう二度と出ない』と思いましたが、女子20位以内だったため翌年に次回大会の招待状が届き、どうしようか迷いつつ友達と毎週末奥多摩に通って練習していました。ところが通う度に楽しくなり、山地図を眺めて次の週はどのコースを行こうかと想像するのが楽しく,すっかりはまってしまいました。2度目からのハセツネは、きつい時がありながらも毎回楽しく参加しています」

06年3位、07年2位、08年4位。ここ数年は優勝候補の一角として注目され、6年目を迎えた昨年のハセツネCUP。春に前哨戦の『ハセツネ30K』を制した星野さんは、昨年の第17回大会でついに頂点に立った。

「(女子)優勝できたのはラッキーでした。タイム的には10時間10分で前年より遅くなってしまいました。自分自身で納得出来る練習量ではなく、走り込んでいないから走力が足りませんでした。優勝できたのはびっくりで、嬉しいけれどちょっと複雑な気持ちです。もう少し練習しておけばという後悔もちょっぴりありました。
今年ハセツネにまた出場するかどうかはぎりぎりまで分かりません。一昨年結婚して子供も欲しいので、ハセツネに限らず今年はトレイルランニング大会についてはまだ何も決めていません。強いて挙げれば『トランスジャパン』に出てまた完走したいかな。それくらいです」

2008年夏、『トランスジャパン』への挑戦
おちゃめ&マイペースな星野さん(右)。尊敬する間瀬さん(左)とステキなポーズ
おちゃめ&マイペースな星野さん(右)。尊敬する間瀬さん(左)とステキなポーズ

2年前の夏、その苛酷さゆえ2年に一度の開催とされる『トランスジャパン・アルプスレース』に星野さんは出場した。登山経験豊富なアルピニストたちでさえ尻込みしてしまうこのレース、参加者は富山湾から静岡県・大浜海岸まで、中部山岳地帯(北・中央・南アルプス)を縦断する全長約415kmを、リミットの8日以内に完走しなければならない。星野さんは初参加ながら7日間と15時間31分で走破したのだ。このレースには19名が参加し、完走者は13名。女性で完走を果たしたのは、間瀬ちがやさん(日本を代表する女性トレイルランナーでありマウンテンスキーヤー)と星野さんだけだった。

「この大会の選考会を兼ねたレースを除けば、北も南も含めアルプスの山に登ったこともありませんでした。ツエルトもまともに張れなくて、レース中は試行錯誤の連続でしたが、あの貴重な体験と感動は何ものにも代えがたいものです。特に南アルプスはひとつひとつの山がとても雄大で、日本にこんな凄い場所があるんだ、と驚きながら走っていました。できればまたあのルートを走ってみたい」

もうひとつ、星野さんが愛してやまないトレイルランニングレースがある。その大会はあの鏑木毅さんがトレイルランナーとしてデビューした大会でもある。

「いちばん好きなトレラン大会は地元の川場での『山田昇杯』です。郷土の登山家を記念して毎秋開催される大会で、武尊山を男子は10kg、女子は5kgの荷物を担いで登ります。担ぐものは何でもOKで、スタート前にちゃんと計量があります。私はいつもユージ君(旦那さまのこと)と塩を固めて背負っています。毎年9月末に行われて100人くらいの参加者ですが、アットホームな大会で、ここ5、6年毎年参加していてすごく楽しみにしています」

トレイルランニングはレースよりもファンランの方が面白いと言う星野さん。中でも南アルプスの山々が大好きで、雪がない時はご主人とよく行くそうだが、その時はトレランでなく、日帰り登山だったりテントを持参してキャンプすることが多いのだそうだ。山は基本的に走るよりゆっくり歩く方が好きで、そちらの方が気分が落ち着くとのこと。

「最近はロードバイクにはまっていて、時々1日に100kmとか長距離を走ります。食べることが好きなので、小さなお尻と美脚を目指し(笑)、ダイエットを気にしつつ楽しんでします」

農家に嫁ぎ豊かな自然に囲まれた日々

ライバル&良き仲間の旦那さんとラブラブ登山
ライバル&良き仲間の旦那さんとラブラブ登山

星野さんは、川場スキー場で同じくインストラクターを務めていたご主人と知り合い、一昨年結婚した。ご主人は地元川場の出身で、夏はご両親と農業を営んでいる。
「もともとはこんにゃく農家なので、春と秋が忙しいのですが、数年前からきゅうりも手掛けていて、こちらは7・8月が収穫の繁忙期です。きゅうりの成長は早いので、毎朝5時に作業を始め収穫できる大きさに育ったきゅうりをひたすらもいで箱詰めします。量が多い時は夜9時までかかることもあり、睡眠不足になるほどです。私もこの時期は作業のお手伝いをするので、正直、トレランどころではありません」

山との接し方は自然体
「レースでは周りは気にしない」という星野選手(2009ハセツネCUP)。結果は後から付いてくる
「レースでは周りは気にしない」という星野選手(2009ハセツネCUP)。結果は後から付いてくる

「農家は基本的に食料を自給自足しており、米も野菜も自分で作って食べます。狭い村生活なので、お互いがお互いを何でも知っているという状況には、都会から嫁いだ自分には違和感がありました。買い物も不便で、正直帰りたいと思うこともありますが、近所の人は皆温かく、自然は豊かで山に行こうと思えばいつでも近くにあるし、良いところもいっぱいあります。
雪があればトレランはできないし、スキーのインストラクターをしていて忙しいので、冬場はほとんど走りません。雪が溶ければまた山へ行こうと思います。そういう意味で、こちらの生活はオンとオフがはっきりしていて、自分の性格にも合っている気がします」

都会の生活から農家に嫁ぎ、人生が大きく変わった星野さん。でも山は変わることの無い生活空間の中の一風景であり、オフの大切な遊び友達。冬はスキー、夏はトレランと登山。山での遊びはトレイルランニングだけではないし、彼女にとってのトレランはレースだけでもない。
好きな時に、好きなようにマイペースで走り、歩く。山は自然に囲まれた日常の一部として、山との接し方はあくまでも自然体だ。
今回星野さんに話を伺いながら感じたこと。日本でもトレイルランニング人口が増えてくるにつれ、その裾野も広がって、スキーでも登山でもハイキングと同じように、山を楽しむ多くの手段のひとつとして、トレイルランニングが定着するのではという可能性…。期待を込めて。

取材インタビュー/2010年2月27日

文=北村ポーリン(『アドベンチャーディバス』代表)

星野 緑さんへの質問

好きな言葉・座右の銘を教えてください。

「健康一番!」「マイペース」

トレイルラン以外でいま、熱中していることは

サイクリング、ミシン

あなたにとっての師匠は?

お世話になっている方がたくさんいますけど、トレランに関しては間瀬ちがやさん。

ライバル・良き仲間はいますか?

ライバルと良き仲間は「旦那」です!

自分はどんな人間だと思いますか?

我が道を行くマイペースな人間

レースにおいて常に心掛けていることは何ですか?

もちろん、マイペースで走ること

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