開催当日の朝、98年長野冬季オリンピックのバイアスロン競技会場となった野沢温泉オリンピックスポーツパークは深い朝靄に包まれた。400mのトラックを有する競技会場が本大会のスタート・ゴール会場、そして3つのセクションに分けられたレースの中継所となる。スタートは早朝7時。6時過ぎから続々と集まった選手たちは広大な芝のフィールドで入念なウォーミングアップを開始した。
前夜梅雨の最後の激しい雷雨を浴びた北信地方、森は大量の雨を吸い、山の上部は深い霧に包まれていた。スタート会場も湿度の高いどんよりした空気が漂う。
全長65㎞、第1回目のレースとして誰もが初めてチャレンジするレース。『4100D』とは累計標高差を示す。数字が大きすぎて類推するための対象レースが分からない。ただ、想定されることは3つのセクションを走破するために3度このスタート(ゴール)ゲートを通過しなければならないということ。山に上がって峰々を縦走しながら最後に麓に下りてくるという類のレースではないということ。果たしてどれほど苛酷なレースなのかは正直、走り切ってみなければ分からない。誰もが旺盛なチャレンジ精神と一縷の不安を胸に、午前7時、陣太鼓の響を背にスタートした。長い一日の始まりだ…。
コースは序盤、野沢温泉の温泉街を周回して林道を詰め山に分け入る。浴衣に丹前姿の温泉客で賑わう朝市のメインストリートを、帯のように長く伸びたトレイルランナーたちが通過していく。予想していなかった光景に驚く観光客、商店の奥さんやおじいちゃんの声援と拍手を受けながら通過していく。選手たちは元気をもらって山を目指す。
セクション1(22㎞)はコース上最高地点、標高1650mの毛無山をクリアし、オリンピックスポーツパークに戻る。温泉街の標高が約500~550mだから、単純に標高差1000m以上を登り、下る。
セクション2(12㎞)は村の入口にある景勝地、北竜湖の湖畔をめぐり、小菅神社から1017mのピークを越えてスポーツパークへ帰還。ちなみにここまでの制限時間がスタート後10時間(午後7時)。
余力を残して挑むセクション3はゲレンデを次々と横切りながら徐々に標高を稼ぎ、志賀高原へ伸びる舗装路を経由し再び山頂上ノ平高原を目指す(そして下る)、本日の最長区間31㎞。
コースプロフィールを見る限り、セクション3に入る前に50%のエネルギーを残しておきたいところ。だから第1は抑えぎみに余裕でクリアし、第2は無難に走り抜いて第3につなげたい。というのがごくノーマルな戦略。ところが繋ぎのセクションであるはずのセクション2で多くの選手たちが苦労したようだ。