トップページ > レースレポート > トランスカレドニアンヌ2015

Green more than the blue ブルーを超える領域 トランスカレドニアンヌ2015

ラグーンに囲まれた渚、入道雲が去った夕暮れの水平線はブルーに包まれる。ニューカレドニアは地上の楽園の一つだ。しかしこの島には、神秘の青を凌駕する色がある。それは深いグリーン。この山岳地帯を走るアドベンチャーレース『トランス・カレドニアンヌ』が7月に開催された。

[開催日] 2015年7月4・5日 [開催地] フランス領ニューカレドニア本島

文=南 洋行/写真=金子雄爾、花村一昇/協力=ニューカレドニア観光局、エアカラン、キャンドルウィック

南半球の青と緑の楽園

夕暮れの水平線を眺めるとなぜかとても穏やかな気分になる。それは生まれたときからずっと変わらぬ感覚だ。海は人類の母。古(いにしえ)より祖先から受け継いできたわれわれのDNAにはきっと”海を感じる”ことができる何かが埋め込まれているような気がしてならない。凪いだビーチを歩きながらそんなことを思う。7月、ニューカレドニアはまもなく冬を迎える。

日本から直行便で8時間、緯度はオーストラリアのグレートバリアリーフと同位置にある南半球の島ニューカレドニア。一年を通してスポーツが盛んなこの島で毎年7月、トレイルランレースが開催されている。リゾートアイランドの山岳地帯で7月第一土日の2日間にわたり決まって開催されるレースが『トランス・カレドニアンヌ』。今年で24回大会となる歴史あるローカルレースだ。

本島グランドテール島は細長い葉巻の様な形をしていて、長さは約350km。幅は50~70km。島と言っても面積はちょうど日本の四国と同等で、島の西と東側では気候も異なる。西側は雨が少なく、一方東海岸は雨が多い。南半球の台風の進路は日本とは真逆で北から貿易風に乗り南下し島に上陸する。

ニューカレドニアは海の美しさは至極だ。本島とイルバテン島を取り囲むサンゴ礁は、オーストラリアのグレートバリアリーフに次ぐ世界第二の大きさを誇る。その長さは1500kmに達し、絶滅危惧種のジュゴンの生息地であり、アオウミガメの重要な産卵地である。2008年にはユネスコの世界自然遺産に登録された。おそらく未開発のダイビングスポットが無数にあるに違いない。

夕暮れ間近のヌーメアのビーチ。季節は初冬だが風は心地よい
夕暮れ間近のヌーメアのビーチ。季節は初冬だが風は心地よい
稜線をひた走るチーム。細かいアップダウンの連続は日本のコースに似ている
稜線をひた走るチーム。細かいアップダウンの連続は日本のコースに似ている

首都ヌーメアを除けば海岸線は小さな町や村が点在するだけで、西海岸を南北に走るハイウエイを北上すると、左手に時折見える海岸線、右手は1000~1500mクラスの山岳地帯と丘陵地が延々と続く。丘陵をまたぐ谷は深いジャングルに覆われている。とにかく自然豊かな島で、マリンブルーと深い緑のコントラストが美しい。そして中央部を南北に走る山岳地域は険しく深い。

島の人口26万人の内、9割はカナックと呼ばれるメラネシア先住民と18世紀後半から入植したヨーロッパ人によって構成される。古くは対立があり激しい独立運動や内戦もあったが、いまはフランス政府統治の島として共存が図られている。先住民の地位が確保され、フランス式の社会保障や雇用制度の基盤が一定水準で確立されているためだ。2018年までに行われる国民投票でフランスにとどまるか独立国になるかを決定することになっている。

ニューカレドニア概要

1774年にイギリスの探検家ジェームズ・クックによって発見され、後にフランス領となる。ニューカレドニア島(フランス語でグランドテール Grande Terre、「本土」と呼ばれる)とロイヤルティ諸島からなる島の面積は1万8575平方kmで四国ほどの大きさ。領内のサンゴ礁群はユネスコの世界自然遺産に登録されている。人口は約 26万人(2012年)、メラネシア系先住民カナックとフランス人が住民の主体で、公用語はフランス語。南緯20度前後の南回帰線にまたがる熱帯地域で、島内には多くの熱帯雨林が形成されている。

ジェームズ・クック

アドベンチャーライクな2日間のステージレース

『トランス・カレドニアンヌ』とはどのようなレースなのか。このレースは日本のトレイルレースではあまりないいくつかの特徴がある。

その1:コースは島内を毎年変更

毎年大会会場が変わり、島を南北に分けて毎年「北エリア」と「南エリア」交互に開催される。山岳エリアはすべてカナック(先住民)の所有地で、毎年開催にあたって土地とトレイルを彼らから借りるため固定できないのだ。開催年度によりコース難度や高低差、距離も異なることが常連参加者たちの大きな楽しみとモチベーションになっているようだ。また、コースは大会直前に発表されるため試走ができないのも特徴。したがってコースロストもたまに起こる。ちなみに今年は南部エリアで行われたため、来年は北部での開催となる。

その2:3人一組のチーム戦

昔はシングルのカテゴリーもあったが現在は3名1組のチーム戦に固定。3人が一緒にフィニッシュすることが最大の目的だ。クラスは男女別「ユニセックス」クラスと男女混合の「ミックス」(男性2女性1もしく男性1女性2)がある。毎年ミックスの方が人気が高いところも、地元フランス人が大半を占める大会だけにその理由がわかるような気がする。地元の女性はとにかくアクティブでスポーツ好きなのだ。しかも若い人だけではない、50代の女性が屈強な男たちに混ざってガンガン山を駆け上がる。ちなみに今年の参加チーム内訳はミックス62チーム 、ユニセックス男性43チーム、女性7チーム。ミックスで完走することがこのレースのステイタスなのだ。

その3:2日間のステージレース。宿泊はテント

2日間のレースの合計タイムで競われる。ステージレースといってもスタートは初日、2日目とも一斉スタート。上位チームは初日のタイム差を勘案してレースを展開することになるが、いまいるポジションが必ずしも実際順位ではないために、常に全力でレースを戦わなくてはならないため白熱するのだ。フィニッシュを果たしてもタイムボードにチーム名が記されるまで順位は分からないのだ。
さらにこのレースの大きな特徴。会場は山村のキャンプ場や学校のグラウンドを使用するため、野営(テント泊)となる。食事は村の炊事場をお借りし移動調理隊の皆さんが準備してくれるビュッフェスタイル。チキンとサラダにフランスパンと簡素なメニューだが、この野営ライフがとても楽しい。テント村では持参のワインとともに本日のレースの感想を語り合いながら談笑する輪がいくつもできる。

男性2、女性1のミックスチーム。女性をサポートするチームワークがポイント
男性2、女性1のミックスチーム。女性をサポートするチームワークがポイント
柵のない牧場で彼らと遭遇。野生ではないとはいえ人を怖がる様子がありません
柵のない牧場で彼らと遭遇。野生ではないとはいえ人を怖がる様子がありません
今年のコースは特に多かったリバー越え。急流はないので安心
今年のコースは特に多かったリバー越え。急流はないので安心

今年の会場はヌーメアから2時間ほどの島中部の山岳地。おおよそ標高1000~1500mの山容は日本の山に似ていて、細かい山ひだ(尾根)が幾重にも連なり、沢が合流し谷を形成している。だからコース中に何カ所もの渡渉(リバー越え)ポイントがある。トレランシューズはレース冒頭から水没。
山麓はカナックの農園や牧場が広がる。ニアウリやナンヨウスギ、熱帯の花が咲き乱れ、人を恐れぬ牛や馬がのんびりと草を食む。スポーツ登山という文化があるわけではなく、トレイルや林道はすべて生活道、したがって牧場や農園から外れるとトレイルが途切れることも多々。そのため村と村を繋ぐ山間部や谷ではときにブッシュを切り開くように草を刈り、専用のトレイルが造られる場所がある。樹林帯では10mごとに樹木に蛍光テープを巻き付けて進行方向を示してある。マーカーを頼りに選手はルートファインディングをしながら進むためオリエンテーリングの能力も試されるのだが、選手たちは慣れたもので、はるか先にある小さなマーカーを見逃さない。時折コースをロストして逆走してくるチームもあるが、優勝を狙うトップチームは外さない。このようなアドベンチャーライクなレースだけに必要装備品もコンパスや非常食はもちろん、エマージェンシーシート、鏡(反射鏡として使用)などサバイバルなキットを携帯することが条件となる。
地元のスポーツクラブチームも多数参加するが、上位チームのいくつかは、オーストラリアやニュージーランドから来たアドベンチャーレースの国際大会にも出場する経験豊富なアドベンチャーレーサーの混成チームで、非常にレベルが高い。大自然にどれだけ身体が順応しているか、サバイバルレースの経験値がこのレースを制する基準になるのだ。

レース会場は毎年変わることは前述したが、会場までは自力で入ることになる。もちろんそれは国内外どのレースも一緒なのだが、車社会のニューカレドニアでは、各自マイカーで会場を目指す。
ヌーメアに開設された大会事務局で資料をもらい、ドライブマップを頼りに車で山麓のベースキャンプを目指す。レース前日の金曜日、まだ明るい午後4時までに到着できるよう、ヌーメアから会場の移動時間も計算し、自分たち、もしくは日本や現地の旅行代理店を通じて現地ガイドをチャーターして会場入りする必要がある。したがってヌーメア入りは木曜着が基本となる。会場で早速、エントリーと荷物検査を行い、テントを張る。夕食時にブリーフィング(説明会)があり、翌日のスタートは5時〜6時だ。
移動日となる金曜は途中で大型スーパーによって2日分の食材や飲料、コーヒーを沸かすための簡易バーナーのボンベ、予備電池など購入して山に向かう。島の南エリアで開催される場合はヌーメアから2~3時間で会場インできるが北エリアの年は、5~6時間移動に要することもある。なお、北へ行けばいくほど町は少なくなり、集落や店も道案内も手薄になるため注意が必要だ。
仲間がいるから心強いし、そのひとつひとつ経験は思い出深いことなのだが、何かアクシデントが起こった際にどう対応すべきかという心構えは事前にイメージしておく必要はある。海外へ旅慣れていても海外での運転経験があった方がベターだし、英語、もしくはフランス語の簡単な会話力は備えておきたい。(スマイルと「ボンジュール」の連呼だけでも、どうにか4日間過ごすことは不可能ではない)

村のサッカー場がテント村、テニスコートがヘリポートに大変身
村のサッカー場がテント村、テニスコートがヘリポートに大変身
初日1位、2日2位、トータルタイム8時間50分9秒で優勝したミックスクラスTeam SAINT VINCENT 例年上位に名を連ねるニュージーランドの強豪チーム
初日1位、2日2位、トータルタイム8時間50分9秒で優勝したミックスクラスTeam SAINT VINCENT 例年上位に名を連ねるニュージーランドの強豪チーム
ヌーメアの高台から港町を見下ろす。なんて風光明美なのでしょう
ヌーメアの高台から港町を見下ろす。なんて風光明美なのでしょう
昨年女子優勝チームのリーダー、アンジェリカ。今年はミックスで参戦し5位。日本のレースだとどのくらいの実力を見せてくれるのだろうか
昨年女子優勝チームのリーダー、アンジェリカ。今年はミックスで参戦し5位。日本のレースだとどのくらいの実力を見せてくれるのだろうか
町中の博物館。コロニアル風建物にフランスの香りが漂う
町中の博物館。コロニアル風建物にフランスの香りが漂う

日本からのチャレンジャーを待つ

ニューカレドニアのトレイルレースの第一人者であり、トランスカレドニアンヌ大会運営の代表を務めるペレズさんは大の日本好き。日本にも何度も訪れている。「ぜひ日本のトレイルランファンの皆さんの参加をお待ちしています」と日本からの参加者を期待している。小サイトも観光局の協力を受けて4シーズン大会のレポートを行ってきた。残念ながらチーム戦という日本ではあまり馴染みのないトレイルレースであること、ヌーメアから会場へのトラフィック(レンタカーを使い自力で現地へ入る行動力が必要)の問題があり、毎年日本からの参加チームは1~2チームにとどまっている。
チームレースはメンバーのチームワークが全て。能力差、性差をフォローし合う思いやりやチームをまとめるリーダーの能力など、個人戦とはかけ離れた、別物のレースとなる。チームメンバーの心がひとつになっていないとレースが壊れたときの葛藤や無念の気持ちは大きい。ただしカレドニアンヌは国際的な選手権ではない。一部の上位チームを除けば、地元のチームはこのレースを「島の冬恒例のトレラン祭り」と捉えている。また今年も、職場や学校、スポーツクラブ、あるいは親子で参加するケースが多い。いい汗をかいて、互いにサポートし合い山や谷を走って完走することで、2日の山遊びとキャンプが完結する。自己鍛錬やストイックに順位やタイムと戦うレースもありだが、このようなスタイルのレースもありだと思う。

ニューカレドニアはちょっと遠い。同じ志向の仲間を3人募るのは簡単ではない。キャンプの装備も必要。でも、多少の手間と労力を費やしても、これほど素晴らしい大自然と、フレンドリーな仲間が集まるニューカレドニアのレースを体験する価値はあると思う。成田に帰って来た時、野趣あふれるレースの思い出と共に、君たちの『海外力』(グローバルな視野と行動力)はまた少しアップしているはずだ。

■大会オフィシャルサイト

大会レビュー

  • ニューカレドニアはフランス領の島。大統領はオランドさんです(KY)
  • ヌーメアから眺望する島南部の山岳地帯。今年の大会の会場はあのあたり(HN)
  • 大会の受付準備に慌ただしい前夜の大会本部(KY)
  • 早々と受付を済ませた皆さんたちがくつろいでいらっしゃいました(KY)
  • 翌朝4時33分、大会第1日目のスタート。先頭グループは手強そうな皆さん(HN)
  • 後方の選手は遠足気分で。相変わらずニューカレの島人はアピールは忘れません(KY)
  • 今大会の核心部。ここは島なのかと思うほど広大な山岳地帯が続く(KY)
  • コースはいきなり密林へ。のっけから足元はびちょびちょです(HN)
  • スタートしてから2時間半、そろそろチーム内でも疲労度に差が(KY)
  • PC3(18km地点)のエイド。飲み物の他、チョコとクッキー、グレープフルーツといった構成はどこも同じ(KY)
  • 消防局の救護チームも毎年バックアップ。何も起こらないのがいい(KY)
  • 各PCを通過したかどうかはカードにパンチで穴を明ける。シンプルでよろしい(KY)
  • 高台に出て海の方角を遠望。遥か彼方に海が見えた(HN)
  • コースは牧場内を通過。それにしてもちょっと太り過ぎでしょ(HN)
  • 馬も放牧されています。「なんだか今日騒がしいね」(HN)
  • トレイルの無い場所は、樹木のマーカーをたよりに進みます。この辺り、オリエンテーリング的楽しさも(HN)
  • 穏やかな河原に出ました。「やっとシューズ乾いたから濡らしたくない」(HN)
  • 会場で見つけた最もかわいいお子は彼女。ブロンドの髪とピンクのワンピが決まってる! (HN)
  • 本日イチバンのピークに先頭チームやって来ました。ゴツイね。右手に持っているのは高度計? (KY)
  • 「いまどの辺りだろ〜」。本日のゴールは近いですよ。がんばりましょう!! (KY)
  • あちこちに植生しているナンヨウスギ。日本の杉とはだいぶ異なる (KY)
  • 村の外れで選手たちを出迎えてくれた女の子。ティアラがとてもお似合いです(KY)
  • 村の林道を抜ければ初日のゴールも近い。思わず笑顔がこぼれます(KY)
  • 「足周りは意外と綺麗だけど、まさか走らないよね」。インディジョーンズで見たようなランドローバー(KY)
  • 選手を飽きさせないために、このようなマーカーも時折登場(KY)
  • ゴール会場には続々と選手フィニッシュ。カナダからやって来たお嬢さんたち(KY)
  • 「こんなポーズでいい?」。明日の学生クラス出場を前にくつろぐ女子高生チーム。最後にでてきます(KY)
  • サポーターはDr. とするとこの3人組は看護師の皆さん? (KY)
  • 「なによ、これからトイレ行くのに撮らないでよ」(KY)
  • 「Hey Guys!」。という雰囲気ですが、地元の青年たちはカメラを向けると笑顔でピースをくれます(KY)
  • 叔父いちゃんと一緒に観戦に来たんだね。キャンプも楽しんでいって(KY)
  • ミックス(男性1、女性2)チーム。最後はどのチームもガッチリ手を繋いで帰ってくる(KY)
  • 大会主催者のクリスチャン・ペレズさん。フレンドリーで日本が大好きなおじさんです(HN)
  • レースが終わるとマッサージサービスが受けられる。選手がうらやましい(KY)
  • レース中、お留守番をしている子供たちは交通ルールのお勉強(KY)
  • レースが終わってもチームワークとれていますね。一緒に大腿二頭筋祭りです(KY)
  • こちらのテントはファミリーで和やかに。お父さんカッコイイね(KY)
  • 大会初日の夕方に行われる会場の村人へのお礼式。シートの上にはお米や塩などの貢物(KY)
  • 村長さんを始め村の重役が集まってきました(KY)
  • 明日も晴れるといいな(KY)
  • ここで村に咲く植物を観賞。むしろインパクトがある白いハイビスカス(KY)
  • 植物名不明。赤い部分が花弁だと思われますが(KY)
  • 怪しいシダ類。それにしても(KY)
  • ここまで来ると円谷プロもビックリ(KY)
  • 2日目のスタートから15分後、先頭で丘をパワフルに登ってきたのは50台の叔父さんたち(KY)
  • いきなりとんでもない急登です(KY)
  • やはり最初はどこでも同じように渋滞です(KY)
  • 陽が登り気温は真夏のように。女性陣も躊躇なく頭から水を浴びるのがフレンチスタイル(KY)
  • 大会2日最大のピーク。ここを登り切れば後はゴールまで走るだけ(KY)
  • やっぱり山頂に到着すると嬉しい。しばし休んでいきましょう(KY)
  • 毎回感じるのはニューカレのフランスのおネイサンたちの男勝りのアクション。とにかく元気です(HN)
  • 男子高校生チームフィニッシュ目前。チームワーク最高だったね(HN)
  • こちらは家族でお出迎え(HN)
  • 先にご紹介したガールズも頑張った(HN)

コースマップ

コースマップ

ページのトップへ戻る