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PART1 カーボローディングの基礎知識

カーポローディングとはレース前にパスタやごはんをガチ食いするという単純なことではありません。他の栄養素とのバランスや食事の中での糖質の割合がポイントなのです。そこでカーボローディングの基礎知識。

そもそもエネルギー(熱量)と運動の関係とは?

私たちの身体は生きていくために必要な力(エネルギー)。例えば身体を動かしたり、物事を考えたり、また生命維持に必要な呼吸や体温調節に至るまで、食べ物を摂取し、消化・吸収する事で、エネルギー源となるものを産出して生きています。よく人間の身体を車にたとえられますが、おおまかに言うと食べ物はガソリン、という事になります。ガソリンがなくなると車は動かなくなるように、私達は食べ物がなければ生きてはいけないのです。
おおまかに食べ物はガソリン、と言いましたか、食べ物の中に含まれている栄養素の中で私たちの身体を動かすエネルギー源は「(1)炭水化物(に含まれる糖質)、(2)たんぱく質、(3)脂質」と呼ばれる3大栄養素です。
私たちは一日何もせずに寝ているだけでも、呼吸・体温維持・臓器を動かす際にエネルギーを消費しています。これを『基礎代謝』と言います。この基礎代謝は、年齢・性別・骨格によって大きく違ってくるのが特徴です。女性よりも男性、年齢も若い方、トレーニングなので骨格筋量が重い方の方が数値が高くなります。
この基礎代謝に、食後に発生するエネルギー+日々活動するエネルギーを合計すると、その日一日の消費エネルギーが出てくる事になるのですが、日々活動するエネルギーについても、職種など生活環境によって大きく違ってくるのです。
職種ならデスクワークの方よりも立ち仕事の方の方が活動エネルギーは多く、車を使う方よりも徒歩の方の方がより多くなります。また、スポーツをされている方は競技種目や、日々のトレーニングメニューによっても大きく異なります。
したがって個人の正確な値を出すという事はとても難しいのですが、スポーツをやっている方は何も運動をやっていない方よりは、活動エネルギーが多いのは間違いありませんので、そうなると摂取エネルギーも必然的に多く摂らなくてはいけない、という事になります。ちなみに摂取エネルギーと消費エネルギーが釣り合っていると、体重は一定に保たれますが、釣り合わなくなると

会社そばのデリカ御用達のランチ。お弁当と春雨サラダでちょうど650kcal
会社そばのデリカ御用達のランチ。お弁当と春雨サラダでちょうど650kcal

「摂取エネルギー>消費エネルギー=体重増」
「摂取エネルギー<消費エネルギー=体重減」
となることはお分かりかと思います。トレイルランナーの皆さんも、ウエイトコントロールをしてレースに臨まれる事もあると思いますが、単に体重を減らしたいからと極端に摂取エネルギーを減らすと、身体に必要な栄養素が不足し、トレーニングやレースに差し支える危険性もあるので、おおまかな自分のエネルギー消費量を知り、それに適した食事をする事もトレーニングの一環として頭に入れておいてほしいと思います。

今回目安として、基礎代謝を求める計算式と、基礎代謝と身体活動レベルをかけて算出する一日の消費エネルギーの計算式を図から求めてみましょう。

基礎代謝を求める計算式と、基礎代謝と身体活動レベルをかけて算出する一日の消費エネルギーの計算式

たとえば、体重60キロ、体脂肪15%のトレイルランナーの方の場合は
体脂肪量=60キロ×15%÷100=9キロ
除脂肪体重=60-9=51キロ
基礎代謝量=28.5×51キロ=1454キロカロリー
通常練習期の持久系スポーツの身体活動レベルは2.50なので
一日の消費エネルギー=1454×2.50=3635キロカロリー
という計算になります。

持久系競技になぜカーボローディングが有効なのか

運動は身体の筋肉を収縮させ、そこで生まれるエネルギーを使って身体を動かしていくことですが、スポーツの種目や競技によって、筋肉の収縮はもちろん、使われるエネルギー源にも違いがあります。
100m走やウエイトリフティング、といった短時間で大きな力を必要とする「瞬発系スポーツ」は無酸素運動とも呼ばれ、競技時間も短いため栄養素を燃やしてエネルギーとする時間がありません。また、全力に近い力を発揮できるかわりに運動は30秒以下に限られてきます。短時間なのでエネルギーを使い果たすという事はありません。
一方、マラソンやトレイルランといった長時間身体を動かし続ける必要のある「持久系スポーツ」は有酸素運動と呼ばれ、酸素をとり入れながら栄養素を燃やしてエネルギーを作ります。大きな力を発揮できないかわりに、長く身体を動かし続ける事ができるのが特徴です。
長く身体を動かし続けるためには、身体はどんどん貯蔵されたエネルギー源を使い続けるので、競技時間が長くなればなる程、身体の中のエネルギー源はなくなっていきます。エネルギー源となるのは、(1)炭水化物に含まれる糖質、(2)たんぱく質、(3)脂質、ということは前述しましたが、エネルギー源としてわれわれが主に使うのは、この中の「糖質」です。『カーボローディング』のカーボ(carbo-)とは炭水化物を意味します。一般にはカーボローディングと呼ばれるケースが多いのですが、正式には糖質を指して『グリコーゲンローディング』と呼びます。
ただし、体内に貯蔵できる糖質の量には限界があります。ちなみに成人の場合、肝臓で約100g、筋肉で約250gの糖質を貯蔵できると言われています。
糖質がなくなると今度は脂肪がエネルギー源として燃えていきますが、枯渇するまで糖質がなくなってしまうと脂肪をエネルギー源として使う事もできなくなってしまいます。

「カーボローディング」は、「レース前までに高糖質食を摂る事により、体内に貯めておける貯蔵量の上限まで糖質を貯めておく」事を目的とし、実際有効な手段としてトップランナーの方も実践している食事法なのです。
ここで確認しておきたいのは、「カーボローディング」はトレイルランにも有効な食事法ですが、長時間におよぶトレイルレースでは、体内にいくらエネルギー源を貯蔵したとしても、それだけでは走りきる事はできない、という点です。前述しましたが、体内で貯蔵できる糖質量には上限があるので、レースでは途中での補給食(糖質補給)が重要となります。

トレイルランレースならではのエイドステーション。長距離レースでは補給が大切。写真は『野沢温泉4100D』大会。補給食はゼリー、フルーツ、おにぎり、塩とバランスもgood
トレイルランレースならではのエイドステーション。長距離レースでは補給が大切。写真は『野沢温泉4100D』大会。補給食はゼリー、フルーツ、おにぎり、塩とバランスもgood

効果が期待できるカーボローディング

以前は一週間の前半は低糖質食→後半を高糖質食という方法がありましたが、現在は改良方としてトレーニング量を徐々に落としながら、一週間の前半は普通食とし、後半を高糖質食とする方法に替わってきています。
高糖質食とは「1日の総エネルギー摂取量の70%以上を糖質で摂るとし、糖質でエネルギー摂取が増えた分を、脂質の摂取割合を減らして調整する」ものです。ただ高カロリーの食事を摂ればいいということではありません。
個人差もありますが、普段スポーツ選手が一日に必要な糖質量は、体重1kgあたり7g程度。体重60kgの方ですと、一日420gの糖質量が必要となります。これはおおよそですが、一日の総摂取カロリーに対して、糖質摂取で占めるカロリー割合の55~60%。普段ならこの割合でよいところを、カーボローディング高糖質食時期は+10%上乗せした糖質量を摂取する事となります。
例えば、糖質量420gが一日の総摂取糖質割合60%とすると、70%を摂取するためには糖質量490gが必要となります。ご飯茶碗一杯(150g)の糖質量から換算すると、約9膳分の計算。3食の食事で毎回茶碗3膳は、食べなくてはならない計算になります。ただし、糖質は主食となるご飯やパン、麺以外にもカボチャなどの根菜類や果物、砂糖などからも摂れますので、主食だけに偏らずバランスよく摂取しましょう。食品に含まれている糖質量については食品成分表を参考にする他、最近は食品の裏にカロリーと共に記載されている場合もありますので、それらも参考にするとよいと思います。

大会1週間前のカーボローディングとウォーターローディング

アスリートの糖質摂取の目安
*お茶碗一杯のご飯は、ここでは糖質1gのアイコンです。実際の糖質量は異なります。
われわれが普段口にする食品には成分表が明記されています。カロリー、脂質の他、糖質も表記されている場合。炭水化物として表示されている場合があります。
われわれが普段口にする祝品には成分表が明記されています。エネルギー(kcal)の他、たんぱく質、脂質、炭水化物など。糖質量(g)≒炭水化物(g)と考えていただいて結構です
われわれが普段口にする祝品には成分表が明記されています。エネルギー(kcal)の他、たんぱく質、脂質、炭水化物など。糖質量(g)≒炭水化物(g)と考えていただいて結構です

メニューとしては前半は普通食なので、普段の摂っている量で問題ありません。主食、主菜(肉や魚)、副菜(野菜や海草類などのおかず)、汁物といったバランスの良い食事を心がけましょう。後半の高糖質食でしたら、主食であれば量を増やす、主菜の肉や魚は脂肪分の少ないものを選び、調理法も揚げ物など油を多く使用する料理は避けたいところです。ただ、日々の生活で食事量を増やすといっても限度があります。そこで、副菜のおかずにカボチャやじゃが芋などの糖質を多く含むものを一品追加、または汁物の具などに加えてもよいですね。そしてデザートとしてバナナや果物ジュースを飲むなどすると、糖質がより多く摂れると思います。

さて、ここでひとつ問題なのが、読者のあなたが妻帯者なのか独身なのかということ。妻帯者の場合は奥様にお願いして、高糖質食のメニューを組み立ててもらう事も可能でしょうが、独身の場合はどうしても外食が多いでしょうし、お家で食べる場合もコンビニ、あるいはスーパーのお惣菜コーナーの利用が多いのでは。そこで、カーポローディングの期間中は、外食するにしても栄養バランスのよい食材の摂取に努めると同時に食事の量も一度にたくさんではなく、朝・昼・晩の3食(間食も可)で糖質食をしっかり摂ることが大切。パスタやお弁当お惣菜などできあいのものを食べる場合でも、食品の内容を記したラベル表示から糖質量をまめにチェックすることも大切です。

ウォーターローディングで身体をみずみずしく

ウォーターローディングとは、レース前の一定期間の間、毎日1.5~2リットルの水をこまめに飲み、体内の細胞内に十分な水分として蓄え、その状態を維持する事を目的とします。私たちの身体の約60パーセントは水分ですので、身体に十分な水分が行き渡っていると細胞内の新陳代謝が活発になり、疲労物質や老廃物もスムーズに排泄されます。結果、レース中の発汗で水分を失っても、著しい運動能力の低下を防げたり、また脱水や熱中症の予防にも効果が期待できます。
内臓に負担をかけない程度に一度に飲む量は250mlを上限とし、一日6~8回、こまめに水分として摂りましょう。始める時期としては、カーボローディングと同時期に行うとよいでしょう。

空腹時の食前は胃液を薄め、食事に差し支える恐れがあるので、気をつけたいところです。あくまで毎日の水分補給を目的とするので、スポーツドリンクや清涼飲料水、果物ジュースではなく、水や微量のミネラルが摂れるミネラルウォーター、利尿作用のあるカフェインの入っていない麦茶などがお勧めです。
コーヒーやビールなどのアルコール類は利尿作用が高く、水分として摂取しても逆効果となってしまう場合があります。できれば控えたいものですが、ウォーターローディング時期に入ってからどうしてという場合は、それらを飲んだ後に必ずお水を飲むよう心がけましょう。

ミネラルと運動機能の関係

ミネラルは3大栄養素のように、身体のエネルギー源となったりはしませんが、他の栄養素を有効に利用する際に欠かせないものであり、また身体の機能を正常に保つために、微量ながらも必要な「メンテナンス=調整」の役割を果たしています。スポーツ選手に馴染みのあるミネラルとして、「カルシウム」、「鉄」、「カリウム」、「ナトリウム」が挙げられます。ミネラルも食べ物の中から摂取しなければいけない、重要な栄養素のひとつです。
カルシウムは主に骨や歯を形成するミネラルとして、身体の中に一番多く存在しています。乳製品、小魚などの食品に多く含まれ、不足すると骨そしょう症の原因ともなります。日本人はカルシウムが不足しがちとのデータもあり、また運動で発汗するとカルシウムは体外に出てしまうので、スポーツ選手は意識して摂りたいミネラルです。
鉄は主に血液中の酸素を運ぶ赤血球の成分で、豚レバーやひじき、貝類やプルーンなどの食品に多く含まれています。鉄が不足すると鉄欠乏性貧血を起こします。「スポーツ貧血」という言葉を聞いた方もいると思いますが、スポーツをする方に貧血の方は実際に多く見られます。鉄も汗とともに体外に出てしまうので、こちらも食べ物から特に意識して摂りたいミネラルといえます。
カリウムとナトリウムは、体液の浸透圧の調整に関係があり、日常摂取する食品に多く含まれています。通常の食事では不足するということのないミネラルですが、ナトリウムは多く摂りすぎると高血圧を発症するおそれがあるので、食塩の摂取には注意が必要です。一日の食塩摂取量は10g以下と言われ、最近ではその値がより厳しくなってきています。
ただし、スポーツ選手はレース中長時間の運動による発汗でナトリウムやカリウムが体外に出てしまうと、筋肉が痙攣する事がよくあります。
スポーツ時の水分補給にはスポーツドリンクをとありますが、何故水ではなくスポーツドリンクなのでしょう?それはスポーツドリンクにはエネルギー補給となる糖分の他に、カリウムやナトリウムなどの成分が含まれているため、発汗で体内から失われたミネラル類を補う事ができ、また体液に比較的近い濃度で作られているため、素早く身体に吸収されやすいのです。
私たちの体液はある一定の濃度で保たれていて、水分補給の際この濃度よりも濃い濃度のものが身体の中に入ると腸までいかずに胃に留まります。そこで濃い濃度を薄くさせようと細胞が働き、細胞内にある水分が薄い濃度→濃い濃度に集められる「浸透圧現象」を起こします。その結果、自発的脱水をも引き起こすのです。

スポーツ選手の日々の食事、そしてレース時の塩分補給は、摂りすぎても摂らなすぎてもいけない、難しいところでもあります。
最近「ナトリウムローディング」という言葉を聞いた事のある方もいるかと思います。「ナトリウムローディング」とは、運動開始30分~1時間の間に、体重1kgに対し、0.1gの食塩を摂るというもので、事前に塩分を多めに摂取する事で、長時間の運動時に起こる、発汗によるナトリウム不足を防ぐ事に効果が期待できます。体重60キロのトレイルランナーの方だと、6g弱の塩を、レース30分~1時間の間に水と一緒に摂る、という事になります。先ほど書きましたが、一日の塩分摂取量と比較しても、一日に必要な塩分の半分以上ですので、当然高血圧などの方、医師から塩分制限を受けている方、日頃から濃い味付けを好む方にはお勧めできません。これらの不安材料がないという事を前提で行ってほしいと思います。

ミネラルはスポーツドリンクやミネラルウォーターからも摂取できます。いい機会だから内容にも詳しくなろう
ミネラルはスポーツドリンクやミネラルウォーターからも摂取できます。いい機会だから内容にも詳しくなろう

<参考文献>
『スポーツ栄養学』鈴木志保子著(ベースボールマガジン社)
『アスリートの食事と栄養』辰田和佳子+長坂聡子著、田口素子編著(ナツメ社)

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