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シリーズ にっぽんのネイチャートリップ(3)北海道・釧路湿原&オンネトー | 地平線の彼方と神秘の湖 特集企画一覧へ

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道東トレッキング

道東トレッキングといっても、そのエリアはあまりにも広大だ。名峰と呼ばれる山は阿寒湖周辺と知床半島を結ぶ千島火山帯にあり、針葉樹に覆われた深い森がオホーツク側と太平洋側を分けるようにどこまでも伸びる。もちろん山だけではなく、釧路湿原や湖も雄大で、その非日常的空間は旅人のインスピレーションを大いに刺激する。 ただ、それぞれの移動距離も長いので、一度の旅行ではあれこれ欲張るのは無理。そこで今回は、道東を代表するトレッキングコースのひとつ、『神秘の湖』オンネトーから雌阿寒岳(日本百名山)に登るトレッキングツアーと、釧路湿原の景勝地キラコタン岬探訪、ふたつの極上プランをご紹介。 レポート=『トレラン王国』 編集部  写真=花村一昇

PLAN1 オンネトーから雌阿寒岳登山

水と大地の鼓動がおりなす別世界

マリモで知られる阿寒湖を挟むようにふたつの阿寒岳がある。「雄阿寒岳(おあかんだけ)」と「雌阿寒岳(めあかんだけ)」と呼ばれる夫婦山だ。その名の由来は、先住のアイヌの皆さんが、湖畔から眺めるこのふたつの山を、ピンネ・シリ(男山)、マッネ・シリ(女山)と親しみを込めて呼んでいたというものだ。
山容は対照的で、雄阿寒岳は針葉樹林帯を抜けるとダケカンバやハイマツ帯に覆われた緑の山。一方、雌阿寒岳はいまも噴煙を上げる活火山で、八合目から上は溶岩が砕けた砂礫(されき)の山だ。人気があるのは雌阿寒岳で、百名山ハンターの登山者の多くも雌阿寒を目指す。というのも雌阿寒岳の方が雄大で、阿寒岳の盟主に見えるから(やはり女性の方が強い)。そして魅力的な二人の子供が連れ添っているためだ。

足寄国道からオンネトーに向かって坂を上がると、正面に大きな雌阿寒岳が姿を見せる
足寄国道からオンネトーに向かって坂を上がると、正面に大きな雌阿寒岳が姿を見せる

一人は「阿寒富士」と呼ばれる綺麗な円錐形の山。たおやかな雌阿寒岳の横に従うようにそびえる男の子だ。もう一人は、山麓の森の中にエメラルドグリーンの湖水を湛える「オンネトー」という名の神秘的で美しい女の子。
旦那さんには申し訳ないが、やはり今回は美しい奥さんと二人のお子さんに会いに行くことにした。

雌阿寒岳へは、西側の湖・オンネトーから登る「オンネトーコース」、雌阿寒温泉から登る「雌阿寒温泉コース」の2つのルートが一般的だ。双方の登山口はバス停ひとつ分、徒歩30分の散策路でつながっている。したがって、一方から登り一方から下山する周回コースが取れる。雌阿寒岳、阿寒富士のふたつのピークを極めて一周5〜6時間(休息含まず)の行程だ。今回はオンネトー側から登るルートを選択した。

湖畔にある国設野営場。登山シーズンが始まったばかりということもあり静か
湖畔にある国設野営場。登山シーズンが始まったばかりということもあり静か

6月は年間でも最も日が長い季節だが、ここ阿寒湖は日本のなかでも特に東に位置するため3時45分頃には日が登る。旅館や民宿に泊まった場合は朝食を済ませてせいぜい7時出発となるだろうが、テント泊の場合は、もっと早く、それこそ5時台には起床して行動を開始した方がいい。一日を有効に使える。
朝6時にオンネトー国設野営場を出発。太陽はすでに上空にある。雌阿寒岳の登山口はキャンプ場の外れにある。道標にしたがいアカエゾマツの群生林のトレイルを行く。二合目までは緩やかな傾斜で、ランを挟みながら軽快に進む。五合目を過ぎると少しずつ森の植生が変わり、アカエゾマツからハイマツへ次第に変化していき、堂々とした阿寒富士が正面に全容を現す。
しばらく進むと、ハイマツもまばらになり、後方には深い森の中にたたずむオンネトーが見える。周辺には黄色い高山植物が無数につぼみを開き、われわれのすすむトレイルの上に咲き誇っている。その可憐な花を踏まないように進む。
七合目に到着。ここが雌阿寒岳、阿寒富士の登山路の分岐。時間はたっぷりある。予定どおり阿寒富士を攻略してから雌阿寒岳を目指すことにする。阿寒富士は溶岩の黒い山。対して目の前の雌阿寒岳は黄土色。阿寒富士の稜線に後から噴火したためと思われるが、ここまで色が異なるのも面白い。

オンネトーの展望テラス。大型の観光バスが訪れると観光客で一杯になる
オンネトーの展望テラス。大型の観光バスが訪れると観光客で一杯になる

ハイマツ帯から溶岩が砕けた砂礫と岩の道にアプローチする。阿寒富士は円錐形のスタイルのよい山で、見る角度によっては色も形も富士山そっくりだ。ジグザクの登山道を40分ほど上ると山頂(標高1476m)に到着。雌阿寒誰より20mほど標高は低いが、山頂からの眺望は抜群で、釧路平野、斜里岳、阿寒湖と知床方面の峰、大雪山系、と360度のパノラマが広がる。オンネトーからここまでは3時間弱。ゆっくりしていこう。

下山路からバイパスして八合目の鞍部(コル)にでる。ここから対斜面にアプローチ。雌阿寒岳山頂までは大きな火口の縁にそって登る。火口に近づきすぎると危ないが、登山道からも火口がよく見える。数か所から白い蒸気が立ち上り、火山特有の硫黄臭が漂う。大地が鼓動している。噴火口には丸い小さな池ができていて、エメラルドグリーンの美しい輝きになぜかホッとする。
この山は1959年、98年、2006年に小規模な噴火が起こり、入山規制されているので、いつ何時噴火が起こるとも限らない。万が一、登山中に予兆を感じた場合は速やかに下山したい。八合目から30分ほどで山頂(標高1499m)に到着。山頂と言っても、火口に縁にできた広いテーブルの上で、モニュメントがないとどこが山頂か分かりにくい。しかしここからの眺めも抜群。360度、見渡す限りの樹海と山と湖。町はどこにも見えない。本州では到底お目にかかれない圧巻の景色だ。地平線に目を移せば、改めて地球は丸いのだということが分かる。感動。

オンネトー温泉「影福」 の露天風呂。硫黄泉のあさぎ色の湯は体がポカポカになる
オンネトー温泉「影福」 の露天風呂。硫黄泉のあさぎ色の湯は体がポカポカになる

山頂からは雌阿寒温泉コースを下山路にとる。ここから雌阿寒温泉までは下り一辺倒なので、自然とトレイルランになる。土と砕けた岩、石のトレイルだが、路面が乾いていればグリップもいい。途中、背の高さほどもあるハイマツ帯やエゾイソツツジの群落(6〜7月上旬開花)を抜けて森に入ればまもなく山麓だ。小休止を含めて60〜70分程度で下山できる。
日本百名山に選定される北海道の名峰だけに、ハイシーズン前とはいえ登山者は意外と多い。登山者とすれ違う際は挨拶を交わして道を譲ろう。

雌阿寒温泉は原生林の中にたたずむいわゆる秘湯だ。オンネトー野営場はここから森のトレイルと湖畔の遊歩道を経由して20分ほど。雌阿寒温泉にはなぜか温泉地と名称の異なる 「野中温泉」「野中温泉別館」と「オンネトー温泉・影福」の3軒が営業しており、いずれも日帰り入浴が可能。料金も300円と良心的だ。下山したらお風呂に、という方は、朝、出発前にオンネトー野営場から車を移動しておくと着換えを持って入浴できる。われわれもそうした。 アプローチしやすい雌阿寒岳は、6時に麓をスタートすれば午前中一杯で下山できる。とても効能のありそうなあさぎ色の硫黄泉で筋肉をほぐしたら、次の目的地へ向けて出発だ。

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  • 朝日がオンネトーを照らし出した。 最高の登山日和
  • 鏡のように地上を映し出す静寂の湖面
  • 湖畔を巡る木道は緑のプロムナード
  • 誰にも邪魔をされない巨大なハスの葉が湖岸を占拠する
  • キャンプ場のはずれに登山口がある
  • しばらく針葉樹の深い森が続く。木漏れ日が温かい
  • 七合目まで登ってくるとハイマツ帯に変化する
  • 振り返れば青いオンネトー。森の中の神秘の湖
  • 火山ガスの警戒を促す注意書き
  • 八合目のコルが阿寒富士と雌阿寒岳の分岐
  • 阿寒富士は巨大な展望台。登りはしんどいが上る価値は十分
  • せっかくなので阿寒富士に登ってみた。後方が雌阿寒岳
  • コルから雌阿寒岳にルートを取る。振り返ると確かに富士山
  • 左手は巨大な噴火口。樹木は一本もない
  • 灰色の噴火口の中に輝く青いクレーター
  • 山頂に到着。だだっぴろい広場の上にポツリとモ二ュメントがある
  • 眼前に広がる超ワイドパノラマ。正面に阿寒湖、その奥に雄阿寒岳
  • 森に向かって走れ!!
  • おとなりの火口には赤沼がある。こっちはちょっと怖い
  • 雌阿寒温泉へ下る途中で再びオンネトー。彼方にうっすらと大雪連峰が見えた
  • エゾイソツツジが開花するとまもなく夏
  • 2mを超えるお化けハイマツ帯を軽快に下る
  • 雌阿寒温泉を経由してオンネトーへ到着。また感動させてもらいました

参考データ

PLAN2 キラコタン岬より釧路湿原眺望

森を抜けるとそこは地上の楽園
快晴のキラコタン岬。初夏の釧路なら出会えるチャンス大
快晴のキラコタン岬。初夏の釧路なら出会えるチャンス大

キラコタン岬は釧路湿原の北側に位置する鶴居村にある。ちなみに阿寒方面へはこの鶴居村を経由していくから、キラコタン岬を探訪してからオンネトーに向かうというプランは鉄板ツアーなのだ。
「岬」といってもそこに広がる景色は海ではなく釧路湿原。湿原に突き出した半島のような丘の先端。実は6000年ほど前までここは海に覆われていたのだ。それを示すようにキラコタン岬やお隣の宮島岬からは貝殻が出土しているという。ちなみに「キラコタン」とはアイヌ語で「津波から逃げた村」という意味らしい。なるほど。
釧路市街地からは広大な湿原を挟んで反対側にあるので、目的地には1時間ほどかかる。実はこのキラコタン岬、許可を得ないと行くことができない。立ち入りにあたっては鶴居村役場に出向いて申請手続きをする必要があるが(別記)、キラコタン岬は1時間程度で探訪できるスポットなので半日あれば十分だろう。
カーナビを頼りに「四阿」という地名のキラコタン岬の入口へ向かう。バス路線ではないので、基本的にこの場所には車がなければ行けない。
入口の東屋が目印だ。ここから先は私有地なので、車はここに停めて岬まで1.3kmほどのトレイルをウォーク&ラン。のんびりおしゃべりしながら歩いても30分程度だ。

虫が多いと体験者のブログで見たので虫よけスプレーでガード
虫が多いと体験者のブログで見たので虫よけスプレーでガード

視界の開けた丘陵の林道をしばらく進むと、徐々に森が深くなる。樹林帯の入口にキラコタン岬への看板があり、車両の進入を防ぐゲートがある。そこを通過してさらに進むこと10分。突然視界が開けて草原の広場に出た。
目の前の景色に思わず、驚愕する。それほど感動する釧路湿原の雄大かつ自然の豊かさを間近に感じるロケーションとの対面だ。蛇行するチルワツナイ川が手に取るように近くを流れ、草原の緑が清々しいように風にたなびく。自然が鼓動している。
丘に登ると樹木の間から、釧路湿原の一端を俯瞰(ふかん)できる。年月をかけて川が氾濫、枝分かれして自然の造形ができたことが分かる。なお、立ち入れるのは岬の先端まで岬から先の湿原は無闇に侵入してはいけない。

北海道では毎度のことですが。念のため気合いをいれて
北海道では毎度のことですが。念のため気合いをいれて

釧路湿原がその昔、海に覆われていた頃、いま立つ場所は浜辺であった。遠浅でアサリなどを捕るには絶好の磯で、子供たちがよく遊んでいたのだろうな、とそんなことを考えながらしばし腰を下ろしてその景色にまどろむ。
ちなみにここキラコタン岬は、明治期の乱獲により絶滅したとされるタンチョウヅルが大正13年に発見された場所でもある。自然を壊して再び保護する、この行為を繰り返すことがいかに愚かな事か改めて考えさせられた。
春〜夏の季節、道東の南沿岸部では名物ともいえる霧が朝方、頻繁に発生する。ちなみに釧路は年間100日霧が発生するため、別名“霧の町”とも呼ばれているほどだ。仮に霧に包まれたとしても旅の風情だと思えばいい。

最後に鶴居村について補足。鶴居村はたんちょう観賞と酪農の村だ。残念ながらたんちょうは飛来する冬が季節。夏は酪農や農場体験で道内各地から観光客が訪れる。キラコタン岬探索に合わせて受け入れ可能なファームを訪問してみよう。体験道産子に身近に触れたり、牛に餌やりなど貴重な体験ができる。また村内には安価でアットホームな民宿(ペンション)が多数ある。オーナーさんが地元ネイチャーガイドをやっている宿もあったりする。道東ネイチャートリップの入り出のベースとしてお勧めだ。いずれも鶴居村のホームページから検索できる。

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  • キラコタン岬入口の目印の東屋
  • 地主の車道として使われている林道を進む
  • あの丘の向こうがキラコタン岬? ワクワクしてきた
  • ゲートに無断立ち入り禁止の注意が記されている。われわれは許可をとっているのでOK
  • 標高は低いはずなのに白樺の林が広がる。やっぱり北国
  • 岬へは下り基調。ランが軽快になる
  • 「いや〜驚いたね。日本にもこんな湿原が残っていたんだ」
  • トレイルが岬を巡っていて、5分ほどで登れる高台に登ってみました
  • 森の間からは湿原を見下ろせる。川の蛇行がよく分かる

参考データ

キラコタン岬への立ち入り申請

キラコタン岬は国立公園に含まれているだけでなく、その場所自体が天然記念物区域(文化庁認定)に指定されている。岬へ向かう途中に民有地も通過するので立ち入りにあたっては許可が必要だ。許可申請は鶴居村教育委員会が窓口となっている。具体的には事前に訪問希望の旨を電話で連絡し、申請書に必要事項を記入したうえで、役場で許可認証をもらう。その際、ゴミの投棄や植物の採取禁止など注意事項の説明を受けるので当然のことながら遵守。また、現地までの地図は鶴居村ホームページからダウンロードできる。 詳しくは鶴居村教育委員会
TEL. 0154-64-2050まで。

森の間からは湿原を見下ろせる。川の蛇行がよく分かる

市街地の中心にある鶴居村役場。ここの教育委員会がある。土日はお休みなので注意

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