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2012/06/12

【イベントレポート】 Mt,Kosha Heaven&Hell 12km ~たかやしろトレイルランニングレース~

友達と一生懸命に山を駆け巡ったこと。
この体験から得たものが、大人になってきっとプラスになる

●イベント=Mt,Kosha Heaven&Hell 12km ~たかやしろトレイルランニングレース~
●開催日= 2012年5月27日(日)
●会場=長野県木島平村上木島平スキー場周辺

レポート=松本 大(トレイルランナー)
撮影=藤巻 翔

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今回のレポートはこの春からプロ・トレイルランナー
として活動する松本大さんです


地域に根付いたレースに出てみたかった
上信越自動車道を北上して中野インターを過ぎると、正面に裾野が広い独立峰が見えてくる。「たかやしろトレイルランニングレース」の舞台である高社山(標高1351m)だ。その形から「高井富士」という別名もあり、地域のランドマークとして、地元住民に愛されている山だ。

私は山岳部出身ということもあり、数多くあるトレイルランニングレースの中でも、「登山」というテーマのあるものに興味をそそられる。それが地元民に愛されている山で開催されているならばなおさらだ。信州の木島平村で開催される「たかやしろトレイルランニングレース」は、山梨県の「富士登山競走」、群馬県の「上州武尊スカイビュートレイル(山田昇杯)」、信州の飯田市で開催されている「風越登山マラソン」などのレースと並んで、以前から出場してみたいと思っていたレースだ。

また、「たかやしろトレイルランニングレース」の魅力はその大会を開催する理念にもある。大会の公式ホームページに、大会を主催するNPO法人インサイドアウトスキークラブの「思い」が綴られている。
「トレイルランニングブームもあり、長距離を走るレースが多くなってきた中で、私たちはこの10km前後の距離にこだわります。地元中高生、ビギナー、エリート、様々な人が自然の中を笑顔で駆け回るその姿にこそ、トレイルランニングの未来があると信じているからです」(大会公式HPより引用)

ザックなどの高価な装備を持っていなくても、シューズさえあれば、地元の子どもたちでも山を駆け回ることができる。エントリー費用も今のトレイルランニングレースでは1万円前後が当たり前になっているが、「たかやしろ」は数千円と安めに設定されている。ボールさえあればできるサッカーと同じようなもので、"敷居の低さ"こそ、スポーツの本来あるべき姿だと私も考えている。
地元に愛される山で、地元密着型のトレイルランニングレースを実現している「たかやしろトレイルランニングレース」とは、果たしてどのようなレースなのか。それを自分の目で確かめたい。大きな期待を胸に抱きながら木島平村に向かった。

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短時間のレースだからこそ一瞬一瞬が思い出になる
レースは距離12km、標高差約800mである。30km以上は当たり前で、100km以上のレースに脚光が当てられている現在のトレイランニング界では異端児のようなレースかもしれない。しかし、短時間のレースだからこそ体感できる魅力があり、一瞬一瞬が思い出として残る。

レースが開催された5月27日はこの時期にしては非常に暑い一日となった。暑さが苦手な私はスタート前のウォーミングアップで汗をかきすぎて体内の水分を多く使ってしまった。ペットボトルの水を被って、体を冷やしてスタート地点に着いた。

スタート時は、賑やかなBGMが流れ、MCの山田さんが場を盛り上げていた。近くには、信州出身の強豪選手が大勢いた。さすが山岳王国の信州。強豪トレイルランナーの層が厚いことを改めて感じた。私はいつもの習慣で、スタート前に自分がこれから登る山頂を見つめながら3回深呼吸をする。その日の高社山の姿は新緑に輝き美しかった。 

スタート後、前に10人ほどの選手がかなりのスピードで飛び出していった。このレースは総合優勝だけでなく、スタート地点から700mほどの地点のトップに与えられる「スプリント賞」や山頂のトップに与えられる「山岳賞」がある。それを狙っている選手もいるため、序盤からハイペースなレースとなった。私は「後の先」を取る戦法なので、序盤は押さえ気味に入り、徐々にペースを上げていった。しかし、予想以上にハイレベルな選手が多く、山頂部に到達しても5人の選手に追いつくことができなかった。なかなか追いつくことのできない苦しさと、この時期にしては非常な暑さ。焦りと緊張感をもって一歩一歩を刻んでいった。

登り坂では喉がカラカラで苦しかったのだが、山頂付近のエイドステーションで水分補給をしたことで気分的に生き返った。山頂では一瞬、広々とした善光寺平の景色を目にしたが、それを楽しむ余裕もなく、自分自身のギアをニュートラルに入れ替えて下り坂を一気に駆け下った。途中には、鎖のある急峻な岩場があるのだが、鎖に頼ることなく己の体の感覚に任せて突っ込んでいった。危険箇所にはしっかりとスタッフがついていて「気をつけてください」と声を掛けてくれた。このようなポイントを抑えた安全への配慮も、このレースの長所だと感じた。

得意の下り坂で先行する5人の選手を抜きさり、後はスキー場をトラバースして1000m下ればゴールだ。しかし、後ろを振り向くと地元信州の強豪ランナーの宮川選手がジリジリと差をつめてきていた。宮川選手は、2年前の「風越山登山マラソン」でもデッドヒートを展開した好敵手だ。「やばいやばい」と思いながら、動かない足を必死に前に前に置いていった。そんな時に、地元の人たちの「がんばれ!」という声援からたくさんの元気をもらった。コースの途中にも観客が多くて、地元の人たちにも認知された大会なのだと感じた。

苦しみぬいた末、必死に逃げ切ってトップでゴール。タイムは事前の予定通り1時間5分台だったが、この暑さにしてはなかなか良いタイムだと思った。宮川選手とのタイム差はたったの29秒。よいタイムが出たのは好敵手である宮川選手のおかげだといえる。今シーズンの初戦をそれなりの走りで終えることができた嬉しさ。そして、高社山という地域のシンボルに登って無事に下りてくることができた達成感。ヒマラヤの8000m峰に登頂したら味わうことができるかもしれないようなハッピーな気持ちに浸ることができた。私がこの気持ちをもつ機会を与えてくださった、スタッフの皆さんには心より感謝申し上げたい。

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将来のトレイルランニングレースのモデルとして
今まで数多くのトレイルランニングレースに出場してきたが、「たかやしろトレイルランニングレース」には、他のレースではみたことのない特長が3点あった。これは、近い将来にトレイルランニングが全国に普及する際のモデルとなる要素になると思うので紹介したい。
ひとつは、運営の効率化である。パンフレットのようなプログラムは無く、受付ではゼッケンは自分で探す。そのため、スタッフは名簿をチェックするだけで、ゼッケンや参加賞を袋詰めする作業をする必要が無い。事前準備の不必要な手間を省くことはイベントを長続きさせるために必要なスキルなのかもしれない。

ひとつは、地域のスポーツクラブが運営を担っていることの長所がある。スタッフが知り尽くしたフィールドでレースを開催しているため、コースは地形の特徴を活かして設定されていた。スタッフの配置やエイドの設定も、参加者への配慮が感じられた。また、賞品は地域の和紙やガラス細工等のステキなものを用意してくれた。地域の人が多かったので、まるでお祭りのような心地よい雰囲気があった。

三点目は、地元の子どもたちが大勢出場していたので会場に活気があったことだ。地域の将来を担う子どもたちの、真剣な顔、苦しそうな顔、笑顔。それが、3月まで教員をしていた私にとって一番嬉しい参加賞だった。子どものときに故郷のシンボルである高社山を駆け回った経験は、一生涯の記憶として残るだろう。近い将来、地域からトレイルランニングの国際大会で活躍する選手が出るかもしれないし、スタッフとして地元のレースの運営に携わるようになる子もいるかもしれない。

トレイルランニングが地域の文化として根付くためには、子どもたちへの普及を欠かすことはできないだろう。それをいち早く実践しているNPO法人インサイドアウトスキークラブの活動を、ぜひ全国のトレラン関係者の方々に知ってもらいたいと思う。

2012たかやしろトレイルランニングレース公式結果(リザルト)
http://www.jf-d.com/~insideout/results/


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主役は参加者ですが、こんなに楽しい大会を開催してくれた
『insideout』の皆さんに敬意を表して。次回もヨロシク!!

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